火星&マリア様の星の祐巳ちゃん・夕子先輩・可南子ちゃん

 ごきげんよう、皆さま
 いつもの前置きコーナーですが、「ロマンあふれる世界の果てへ! 秘境特集」(詳しいHPは「http://picks.dir.yahoo.co.jp/weeklypicks/」です)
 勇気のある大人の皆さん、今年の夏に幼い子ども心に戻って出掛けてみてはいかがですか!?
 また、学生の人達は夏休みに冒険心を持って立ち向かう旅行として楽しめるかもしれませんね!!

 では、マリア様がみてるに突入です。マリア様がみてる 20 妹(スール)オーディション (コバルト文庫)

  • マリア様の星

       5(P.90〜99)

 「部活で、お姉さまはできそう?」
 「いいえ。私は、今のところどなたの妹にもなる気はありません。来年になったら、妹はもってみようかと思いますが」
 「そっか」

 口に出して言わなかったけれど、可南子ちゃんにとって、お姉さまと呼べる人がいるとしたら、それはこの世で夕子さんだけなのかもしれない。―祐巳は、そう思った。
 「もう察していらっしゃると思いますが、私、花寺の学園祭の頃まで、祐巳さまに夕子先輩を重ねてたんです」
 「うん」

 可南子ちゃんが、自分の中に誰かを探していることを、祐巳はいつからか知っていた気がする。そしてリリアンの学園祭で夕子さんに会って、「この人だったんだ」ってわかった。
 「この学校で祐巳さまと出会い、私は中学時代の夕子先輩を見つけた気になりました。だから、もう二度と同じ間違えをさせちゃいけない、って。偉そうに、この人は自分が守るんだ、なんて粋がってました」(涼風さつさつマリア様がみてる 14 涼風さつさつ (コバルト文庫)参照)
 そんなこともあったなあ、と、祐巳も今だったら懐かしく思い出せる。
 「でも、幻滅させちゃった」
 可南子ちゃんが求めたものはあまりにも高く、現実の祐巳はそれにまったく追いつかなかったのだ。

 とやはり、可南子ちゃんは「大切な祐巳さまを夕子先輩の二の舞にしたくない」という温かい思いやりを込めて、祐巳ちゃんをボディーガードしていた訳ですね!! 祐巳ちゃんを「馬鹿」にしたという行為は決して良くありませんでしたが、可南子ちゃんはもう立派なレディーへと成長していますね。
 そして、来年には「妹」を作る気満々でいますよ。 (これまた、可南子ちゃんに置いていかれる気分を味わってしまいますが・・・)

 祐巳さまは、不思議な例えをなさったことがあったでしょう?
双子の片っぽが火星に行った、みたいなこと。覚えていらっしゃいます?」
 「うーん」

 言ったような言わないような。体育祭の前だっただろうか。(レディ、GO!マリア様がみてる 15 レディ、GO! (コバルト文庫)参照)
 「私、それで気が抜けたんです。気が抜けたと同時に、肩の力が抜けたんでしょうね。無理して一人で戦わなくてもいいんだ、って」
 「可南子ちゃん・・・・・・」
 「私の憧れていた祐巳さまとは、もう会えない。会えないのは悲しいけれど、あの人はちゃんと火星で生きている。顔は似ているけれど別の人間と割り切るならば、地球に残った方ともつき合っていける気がしてきました。で、実際そうしてみたら、思った以上に味のある人間だったものだから。いつの間にか、こっちの方に親しみを感じるようになってきて」

 それは素直に喜んでいい話なんだろうな、と思いながら、祐巳は可南子ちゃんの話に耳を傾けていた。
 祐巳さまは、私の抱いていた祐巳さまのイメージを全否定しないでくれました。あの時、私が見ていた物はすべて幻だって言われていたら、たぶん私は救われなかったと思います。幻だったものは、私の想いです。ずっと抱いていた想いを否定されたら、・・・・・・心を否定されるのは、それはとてもせつないことだから」
 「・・・・・・うん」

 そうだね。つらいね。
 でも、可南子ちゃんは今笑っている。
 「夕子先輩と再会して、私、正直どうなっちゃうか不安だったんですけれど。会ってみたら、祐巳さまのように夕子先輩も双子の片方だったんだって気づいたんです。だったら、しょうがないか、って。たぶん、昔、私と同じ一つのバスケットボールを追いかけていた夕子先輩は、今はきっと火星で生きているんですよね」
 「えっ、また火星なの?」

 祐巳が聞き返すと、可南子ちゃんは真顔でうなずいた。
 「ええ。祐巳さまの片方と一緒です。私、マリア様の星だと思っています」   「ま・・・・・・、マリア様の星。それは、また」
 ロマンチックなのかもしれないが、考えようによってはミスマッチな―。
 「嫌だ、そんな顔をしないでください。祐巳さまが作ってくださった世界ですよ。私、一生大切にします」

 何て、可南子ちゃんは幻想的なんでしょう!! 私もいつかこんな素敵な女性へと変身できるといいんですが・・・

 そして、最後の名場面シーンですが、

 そこには、過去に愛したものがある。
 遠い夜空で、今日もちゃんと輝いている。
 確かに、この世に存在したということを忘れないために。
 ここから先に進むための、お守りとして。
 「可南子ちゃん」
 祐巳は、可南子ちゃんの手を取った。何だろう、胸がいっぱいになった。
 「やっぱり、ツーショット写真撮ろうよ」
 「えっ」
 「そうだ、今から」

 善は急げ。返事も聞かずに、歩き出した。蔦子さんは、今どこにいるのだろう。教室か。でなければクラブハウス。
 祐巳さま、でも」
 「可南子ちゃんとの約束だからじゃないよ。私が欲しいの、可南子ちゃんとの写真」

 可南子ちゃんは一瞬目をパチクリしたが、やがて笑ってうなずいた。
 手をつないで、ちょっとだけ走る。
 枯れ葉も、カシャカシャと笑っている。  
 冷たい風が、気持ちいい。
 可南子ちゃん。―祐巳は空を見上げて思った。
 がんばれ。
 姉妹にはならないけれど、私たちは友達だからね。と。

 たとえ姉妹関係にはなれずとも、お互いに仲良く出来る上級生と下級生の間柄はとても素敵な関係だと私はそう感じますね。 
 (何だかここの辺りは遠距離恋愛にも近いような・・・ 何か違いますが)

 と祐巳ちゃんと可南子ちゃんの仲はこれからも末永く続いていって欲しいと願っています。
 今日はこの辺にて・・・ 5(P.90〜99)は以上です。 では、ごきげんよう